DAY 10:バックテストで特に注意したい項目―スプレッドと約定スリップ
前回(DAY 9)は、バックテストとフォワードテストの基本的な違いや活用法を学びました。
今回は、それをもう少し掘り下げて、特にバックテストを行ううえで見落としがちなスプレッドや**約定スリップ(スリッページ)**などの要素を中心にお伝えしていきます。
バックテスト結果がどれだけ優秀でも、実運用で差異が大きくなりすぎると困りますよね。数字の差を最小化するための考え方を押さえておきましょう。
スプレッドの設定が甘いと実運用とのギャップが広がる
バックテストでは、FX会社や口座タイプによって異なる実際のスプレッドをきちんと再現できないことがよくあります。
たとえば、MT4の戦略テスターで「固定スプレッド」を設定したまま検証すると、実際の変動スプレッドとは大きくかけ離れた結果になるかもしれません。
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固定スプレッド設定のリスク
多くの通貨ペアは、流動性の高い時間帯はスプレッドが狭く、閑散期やニュース直後は広がる傾向があります。固定スプレッドでしか検証していない場合、その変動がまったく考慮されず、結果が実運用よりもよく見えすぎることがあるのです。 -
ブローカーごとの実際の平均スプレッドを参考に
可能であれば、自分が使うブローカーの平均スプレッドやスプレッド履歴をチェックし、戦略テスターのオプションで近い数値を設定するのが望ましいでしょう。
また、必要以上に甘い(狭い)スプレッドではなく、少し広めに設定しておくほうが安全側に立てます。
約定スリップ(スリッページ)を考慮する
スリッページとは、注文価格と実際の約定価格にずれが生じることを指します。
高速な相場変動やサーバー遅延などが原因で、思っていた価格より有利でない(高い価格や安い価格)でポジションが建てられる場合があり、トレーダーにとっては実質的なコスト増になります。
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バックテストには標準的なスリップが反映されないことが多い
戦略テスターは理想的な約定を前提とするため、実運用で生じる微妙なスリップが考慮されていない場合が大半です。 -
検証ソフトやツールでスリップを擬似的に設定する方法
一部のバックテストツールでは、あらかじめ「1pipsのスリップ」「2pipsのスリップ」など仮定してテストできる機能が備わっていることもあります。
そうした機能があるなら、実際のブローカーや口座状況を見て、適度なスリップ値を設定した検証を行うのが理想です。
ニュースや指標発表時の急激な変動
スプレッドもスリップも、特に経済指標の発表時や要人発言などで急速に動く相場において顕著に表れます。
普段は平均0.3pips程度のスプレッドであっても、こうした大きなイベント時には3~5pips以上に広がることも珍しくありません。
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対策例
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ニュース時にEAを停止する設定を組み込む
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指標発表前後はエントリーを控えるフィルターを導入する
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トレンドブレイク狙いのEAなら、むしろボラティリティ増大を狙う一方、滑りを加味してリスク管理を強化する
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バックテストでは、これらの急変動を正確に再現しにくいので、「最良の結果」に踊らされないよう注意が必要です。
バックテストの精度向上に向けて
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高品質のヒストリカルデータを使う
ブローカーによってはティックデータ(1ティックごとの価格変動)を提供していたり、外部ツールでティックデータを取得してより正確なテストを行うことができます。
分足ベースのデータにティックを擬似生成する方法だと、やはり誤差が生まれがちです。 -
複数期間にわたる検証をする
スプレッドや相場状況に差が出やすい期間(ボラティリティが高い時期・低い時期など)を、複数選択してテストすると、EAの頑健性がつかみやすいでしょう。 -
バックテスト結果の大きな数字を疑う謙虚さ
数千%のリターンや極端に高い勝率が得られたとしても、実運用で再現できない可能性が高いことを常に意識し、甘い期待を抱きすぎないよう心掛けることが肝心です。
今日のまとめと次回予告
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バックテストの結果が良くても、スプレッドの固定設定やスリッページ無視などで現実を反映していないケースが多い
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忠実な再現を求めるなら、可能な限り高品質のティックデータを使用し、想定よりやや厳しめのスプレッドやスリップを仮定するのが安全
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ニュース時の急変動など、実際の相場特有の動きはバックテストで再現が難しく、それを前提としたEAの稼働ルールを設定する必要がある
次回(DAY 11)は、**「複数EAのポートフォリオ運用―リスク分散と収益安定化」**をテーマに、1つのEAに固執しない運用のメリットと、ポートフォリオとして組み合わせるコツを解説していきます。ドローダウンリスクを抑えてより安定した収益を追求するうえで、大きなヒントになるでしょう。
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バックテストの際には、スプレッドやスリップを厳しめに見積もって検証してみてください。
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