【第1話】迷いの始まり 〜「今日こそ勝てると思ったのに…」〜
【第1話】迷いの始まり 〜「今日こそ勝てると思ったのに…」〜
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「今日こそはうまくいくはずだ。」
朝、コーヒーを片手にパソコンを立ち上げる。画面には、見慣れたチャートが表示されていた。ローソク足が上下にリズムを刻み、時に不規則に跳ねては沈んでいく。その動きを眺めながら、今日もいつものように取引を始めた。
FXを始めた頃は希望に満ちていた。しっかり勉強さえすれば、すぐに勝てるようになるはずだと信じていた。
本屋に並ぶ投資本、ネットや動画サイトに溢れる「必勝法」、SNSでは収支報告を誇るトレーダーたちが次々と目に入った。努力すれば自分もそこに並べると思っていた。
最初のうちはデモトレードで少し勝てた。運良く連勝が続くと、自分にはセンスがあるのではないかと感じ始めた。だが、その自信はすぐに打ち砕かれていく。
負けが積み重なり始める。
買えば下がり、売れば上がる。利確は早すぎ、損切りは遅すぎる。
「あと少し我慢していれば利益になったのに。」
「やはり今のうちに利確しておくべきだったのか。」
迷いと後悔が頭の中を巡り、焦りばかりが募っていった。
まるで知らない街を地図も持たずに走り続けているようだった。間違った道に入ってはUターンし、横をスムーズに進んでいく車をただ眺める。そんな日々が続き、投資資金もじわじわと減っていった。
ある夜、大きな負けを出した日のこと。深夜の静まり返った部屋でパソコンの画面をじっと見つめていた。手のひらは汗で湿り、胸の奥が締め付けられるように痛んでいた。
「なぜ…なぜこんなに勝てないのか。」
悔しさと情けなさが込み上げ、自然と涙が滲んでいた。
数分の間に勝ったり負けたりを繰り返し、心は疲弊していった。いつの間にか、取引そのものが苦痛に感じられるようになっていた。
このとき、ふと思い至る。
もしかすると、問題は相場ではなく自分の中にあるのではないか。
FXは知識や分析力の勝負だと思い込んでいた。しかし、最も厄介なのは自分自身の「感情」だった。
欲に流され、恐怖に怯え、焦りと後悔に支配されていた。そのせいで冷静さを失い、ミスを重ねていたのだ。
この段階では、まだ解決策は見えていなかった。ただ、自分が戦うべき相手が相場ではなく「自分の感情」であると気づけたことは、ようやく踏み出した一歩だったのかもしれない。
第2話へ続く
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