ホリエモンの逆襲・第二章──巨人SBI北尾と堀江貴文が再び交錯する、20年越しのフジテレビ戦争
2005年、フジテレビと激しく対立し、政財界から排除された堀江貴文氏。その後の逮捕により人生のどん底に落とされました。あれから20年、日枝久氏の退陣、そして経営権を巡る改革派との対立が激化する中、SBI北尾氏が堀江氏の名を挙げたことで因縁が再燃しようとしています。フジ買収を阻止しSBI会長となった北尾氏と、いち起業家へ転落した堀江氏。両者の和解は、真の和解なのか?北尾氏が利用しているだけなのか?それとも堀江氏による新たな復権への布石なのか?フジテレビをめぐる“第二章”が始まっています。
日枝氏退任から第二章へ
2024年末に発生した中居正広氏のスキャンダルを発端に、フジ・メディア・ホールディングス(FMH)は企業イメージの悪化、スポンサー離れ、広告収入の減少から、経営陣を一新。堀江貴文氏が名指しして批判した日枝久氏が退任となると、2005年の因縁は収束したかに思われました。しかし、芸能スキャンダルとしての扱いから、2025年4月には問題が「経営紛争」へと発展し、企業のガバナンス体制や資産戦略を巡る株主争いに変貌しています。
堀江氏はSBIの参戦に「胸熱すぎる」とXに投稿し、さらに「これから“第2章”が始まる」「株主総会には私も行くつもりです」と語るなど、自身の中で復讐の物語が次の章へ移ったことを暗示しています。
株価が映し出す緊張と期待
FMHの株価は2025年初頭から急激な動きを見せています。
- 1月9日(年初来安値):1,574円。中居氏の不祥事報道やそれに伴う広告主の撤退により、市場からの信頼が大きく損なわれました。
- 1月中旬〜下旬:港浩一社長の会見や、米アクティビストファンド「ダルトン・インベストメンツ」による第三者委員会の設置要求が市場にポジティブな材料として受け止められ、1月22日には株価は1,971.5円に急騰。
- 2月末:10時間に及ぶ記者会見の直後には2,035円まで上昇。依然としてPBR(株価純資産倍率)は0.5前後という割安圏にあり、不動産資産(700億円以上の含み益)への注目が集まりました。
- 4月17日~18日:SBIホールディングスの北尾吉孝氏が「FMH改革」への参戦を表明。これにより4月18日には一時3,292円を記録。
- 4月19日時点:3,178円(PTS)。PBRは0.78倍と、他の民放(日本テレビ0.90倍、テレビ朝日0.64倍)と比較しても依然として割安感があるとされています。
この株価の急上昇は、市場が「ガバナンス刷新」「資産の分離」「事業再編」といった改革に本気で期待していることの現れでもあります。一方で、実際の業績には未だ課題が多く、改革が伴わなければ反落リスクも大きいと言えるでしょう。
堀江氏と北尾氏の因縁
2005年、ライブドアの堀江氏はフジサンケイグループに挑戦。ニッポン放送株を買い進め、メディアとネットの融合を実現しようとしました。しかし、これを阻止したのが北尾吉孝氏。当時ソフトバンク・インベストメントの代表として、フジ側の“ホワイトナイト”を演じ、堀江氏を排除する形となりました。
その後、堀江氏は政財界からの包囲網に巻き込まれ、ついには逮捕・収監という結末を迎えます。もし当時フジ側が堀江氏を経営に迎えていれば、あの事件の結果も違っていたかもしれません。堀江氏の逮捕は違法行為への対処というよりも、「若き起業家」への見せしめだったと捉える声も根強く存在します。
もちろん、北尾氏が直接関与していた証拠はありませんが、2017年のインタビューで「株式市場の清冽な水を汚した」と堀江氏を批判するなど、経営陣に入れる意思がなかったことは明白です。かつては犬猿の仲とまで言われた両者ですが、2022年には堀江氏の宇宙事業へSBIが出資。2025年には北尾氏が「悪いことをした」と発言するなど、関係改善が見られます。
フジ覇権を狙う登場人物
中居正広氏や石橋貴明氏を巡る話題は、当初こそ注目を集めましたが、現在のフジ・メディア・ホールディングス(FMH)においては、経営の中枢をめぐる争いが主戦場となり、芸能スキャンダルの影響はもはや影を潜めています。焦点は完全に「誰がフジを支配するのか」という経営権の奪い合いに移っており、それはかつてない規模の覇権争いへと発展しています。フジテレビという巨大メディア企業をめぐって、企業家、投資ファンド、老舗の支配者たちが入り乱れる構図──まさに“骨肉の争い”と呼ぶにふさわしい展開です。ここでは、その争いに名を連ねる主要キャストたちを紹介します。
? 改革派(アクティビスト陣営)
- ダルトン・インベストメンツ:米国のアクティビストファンド。7%超の株式を保有し、取締役刷新と資産の分離・株主還元を提案。
- SBIホールディングス/北尾吉孝氏:ダルトンと連携し、FMHの取締役に自身を含む候補12名を提案。メディア・IT・金融の融合戦略を提唱。「5%くらい買うのは訳ない」「白旗を上げて逃げることはない」と強気の発言。
- 村上ファンド(村上彩花氏):村上世彰氏の娘で11%超の株式を保有。株主利益の最大化を重視。
- 堀江貴文(ホリエモン):発言力と象徴性を持つ存在。資本的影響力は弱いが、世論形成において大きな力を持つ。
? 現経営体制(日枝派)
- 日枝久氏:フジテレビを40年支配してきた実質的オーナー的存在。その息のかかった人材がフジテレビに在籍しており、いまだ影響力は健在。
- 金光修氏(FMH社長):現体制を支える中核人物。
- 清水賢治氏(フジテレビ社長):ダルトン側からは“残してもよい”と評される中間的ポジション。
⚪ 中立・周辺勢力
- 電通:広告収入の大部分を支えるが、表立って経営には直接関与せず。
- ソフトバンク(孫正義氏):SBIの母体であり、北尾氏の元上司。直接関与はないが影響力は潜在。
- 信託銀行(マスタートラスト、カストディ銀行など):合計15%超の株式を保有するが、どちらに動くかは不透明。
堀江氏の資産は、数十億から100億円、あるいはそれ以上とも言われており、一般の個人としては十分な資金力を有しています。ただし、アクティビスト投資ファンドと比べればその規模には大きな開きがあり、この舞台では資金面で圧倒的な差ががあると言えます。
覇権をめぐり北尾氏が乱入
フジテレビ側が提示した経営陣が日枝久氏の息のかかった人が残っていることを理由に、旧体制からの脱却ができていないと北尾氏は今回の改革に強い決意を見せており、次のように語っています。
「5%くらい買うのは訳ないことです。僕が乗り出した以上は、白旗上げて逃げるということはあり得ない。僕は言ったことは必Oやり遂げる。それが僕の信念ですから。だからやり遂げるんです」
などと小泉構文のような言い回しで、決意を語っています。また、かつて争っていた堀江氏についても、北尾氏はこう述べています。
「(堀江氏は)この分野にも知見があるし、能力も極めて高い人だと思います。過去いろいろあったことは僕も事実なんだけど。第三者委員会の報告書で、つくづく僕は堀江くんに悪いことしたなと。僕の当時の20年前の判断は珍しく外れていた」
これに対し、堀江氏も自身のYouTubeチャンネルでこう応じている。
「今後、北尾さんたちのチームと連携をして、フジテレビのメディア事業の再編など機会があればお手伝い出来れば良いかな。アニメ、ガチャピン・ムックみたいなIP(知的財産)もいっぱい持っている。こういったところを再建できれば、面白いことになるんじゃないか」
北尾氏の「判断は珍しく外れていた」という発言には、過去の確執が完全に払拭されたわけではないという微妙な距離感がにじんでいます。「珍しく」という表現には、自身の判断に対する誇りと慎重な姿勢が交錯しており、その背後にある真意を読み解きたくなるものがあります。
北尾氏の発言の意図
北尾氏はソフトバンクの後ろ盾や圧倒的な資金力を背景に、SBIを率いてきた実績がありますが、その自信がこれらの発言に現れていると見ることもできるでしょう。一方、フジテレビでは中居氏の性加害を契機に、セクハラ体質が問題視され、第三者委員会の調査ではパワハラの構造的な横行も示唆されています。北尾氏の改革への強い発言が、現場に過度なプレッシャーを与え、逆にパワハラ的体質を助長する懸念があるという見方もできるかもしれません。
北尾氏の発言にある「外れた」とは何をいみしているのでしょうか?堀江氏によるフジ買収を阻止したことを指すのか、それとも堀江氏を経営に迎え入れなかったことへの反省なのか、嫌韓デモとなるような異常事態となったことか、あるいは、自らがフジの経営に深く関与しなかった選択を悔いているのか。いずれにせよ、この発言の真意がどこにあるのかは、北尾氏の今後の行動によって明らかになるのかもしれません。
ホリエモンなら世論は見方
仮に北尾氏が本心から「堀江氏に悪いことをした」と考えているのであれば、フジテレビの改革に彼を積極的に関与させるような言動があっても不自然ではなかったはずです。しかし、現実にはネクシーズグループの近藤太香巳氏を、FMHのデジタル戦略とガバナンス改革を担う重要な取締役候補として推薦しており、堀江氏の名前はその中に含まれていません。こうした状況からは、「堀江氏の存在は無視できないが、実権は渡さない」という明確なスタンスが見え隠れしているようにも感じられます。
もし今もかつてのような敵対関係にあったならば、日枝久氏の次に北尾氏が世論の矛先となっていた可能性は否定できません。SNSでわずかな発言が拡散され、企業イメージに大きく影響する現代において、堀江氏を敵に回すことは得策ではありません。そのため、ホリエモンを味方にしておくことは、メディア戦略上、大きな意味を持つと言えるでしょう。ただし、それが事前に練られた戦略に基づく「和解」だったのか、単なる個人としての思いから来た発言なのかは、現時点では明らかではありません。
堀江氏の本心は?
2025年1月、堀江氏はXで「SBI参戦したら胸熱すぎる!」と投稿し、和解ムードを受け入れるような姿勢を見せました。しかし、過去に北尾氏を「金の亡者」などと批判してきた経緯を踏まえれば、堀江氏が完全に信頼を寄せているとは考えにくい面もあります。
10億円の出資と「悪いことをした」という一言だけで、20年に及ぶ因縁や収監された過去を水に流せるとは思えません。ただし、堀江氏も現在は52歳。自らの宇宙事業にSBIの出資を受けている立場でもあり、対立が現実的でないことも理解しているでしょう。
この関係では、既に歯向かうようなことはしない可能性もありますし、それどころか本心で、北尾氏に忠誠を誓っているのかもしれません。それとも“戦略的和解”を貫いているのか──。その本心は、これからの堀江氏の行動で明らかになるはずです。
ホリエモンの現実的な勝機
堀江氏は、資金力や制度面ではアクティビスト連合のような“巨人たち”に対抗できる立場ではありません。しかし、唯一と言える勝機が「世論」という武器の活用にあることは間違いありません。特に地上波は規制やコンプライアンスの制約が強く、自由な発信が難しいため、FODのようなネット配信プラットフォームでの展開が、堀江氏にとって現実的な選択肢となる可能性があります。
たとえば、「まつもtoなかい」のスピンオフをFOD限定で制作・配信すれば、注目度は爆発的に高まるでしょう。ネットであれば、地上波で10年かかるような番組も1週間で実現可能です。地上波では実現できないコンテンツや、リアルタイムで忖度のない情報を伝える場を生み出すことができれば、視聴者の信頼と関心を取り戻すきっかけとなり、既存メディアの構造にも揺さぶりをかけることができるかもしれません。
FODを通じた影響力の拡大なのか、それとも別の戦略的アプローチを用意しているのかは定かではありませんが、「フジ社長に堀江貴文」という世論を築けたとき、初めて経営の中枢に迫るチャンスが見えてくるでしょう。過去には追い出された立場であった堀江氏が、今度は“内側から動かす存在”として返り咲く。その未来が現実味を帯びる時が、まさに“第二章のクライマックス”なのかもしれません。
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