赤澤大臣とトランプ大統領の交渉戦略──“コメ100万トン”で関税交渉を優位に
トランプ大統領は、日本を突破口に選んだのかもしれません。関税交渉で先頭に立つ日本の行動に世界が注目しています。アメリカ国民に成果をアピールしたいトランプ大統領は、どのような要求を赤澤大臣に伝えたのでしょうか。双方にとって“見える成果”を演出しようという構図が動き出しています。外交ショーの裏に潜む本当の狙いとは何でしょうか。考えていきましょう。
結果が欲しいトランプ大統領
2025年、トランプ大統領が再任して4か月が経過しました。国際的にはウクライナ、ガザ、EU、中国など多方面と交渉を行っているものの、目立った成果は見られません。そんな中、日本の赤澤経済再生担当相が異例の早さで訪米し、トランプ氏と直接会談しました。格下と見なされる赤澤氏に対して、あえて会談の時間を設けたこと、さらに再訪を今月中に予定しているという情報もあり、米国としては早期の成果を欲している状況がうかがえます。
赤澤大臣の訪米とトランプの反応
赤澤亮正経済再生担当相は、2025年4月中旬に訪米し、アメリカ政府高官と会談したほか、トランプ大統領とも面会しました。この訪問の主な目的は、日米間の経済関係の強化および関税政策、サプライチェーンの強靭化、エネルギー協力などについての意見交換にありました。
トランプ大統領は、政権復帰後初の明確な成果としてこの会談を演出したい意向が強く、「日本との連携は過去最高」と語った一方で、会見では詳細を明かさず、沈黙による圧力を見せました。これは、今後の交渉で日本からの目に見える譲歩を引き出す布石であるとも解釈されています。
トランプの狙い
トランプ大統領は、国民に見える形での成果を求めています。特に雇用や農業、貿易といった分野において、自らの支持基盤である「忘れられた人々」へのアピールが急務となっています。そのため、日本との交渉においても、目に見える形での譲歩を引き出し、それを成果として大々的にアピールする必要があるのです。
忘れられた人々が属する産業
トランプ大統領が強く意識している「忘れられた人々」は、特定の産業に集中しています。たとえば、ラストベルトにおける鉄鋼やアルミ、自動車部品に関わる労働者、さらには中西部の農業従事者、エネルギー転換の中で立場を失った石炭関連産業、軍需産業に依存する地場製造業などがそれに該当します。
短期的に実現可能な譲歩
このような背景を踏まえ、日本が短期間で実行可能な譲歩には具体的な選択肢がいくつか存在します。そのひとつが、トウモロコシや大豆など穀物の緊急輸入拡大です。契約の即時実行が可能であり、アメリカ農家を支援するという演出的効果も期待できます。
また、米国産コメの輸入容認や増枠も現実的な手段です。現在の日本国内ではコメ不足が表面化しており、この状況を活かせば投機的な在庫売却を誘発し、価格安定や物価対策に直結する効果が見込まれます。あわせて、減反政策の見直しを目立たせずに進められるという政治的利得もあります。
外交演出としての価値
たとえば、コメ100万トンの即時買い付けを締結するような場面が演出されれば、トランプ大統領は「日本は賢いパートナー」「農家を救った」「72時間で出荷した」といった誇張されたメッセージで米国メディアに向けたアピールを展開するでしょう。このような即効性があり、インパクトのある数字を世界中に発信することができれば、追従して交渉を行っている他の国々にもプレッシャーをかけることができます。
国内的には、コメ価格の安定がインフレ抑制に寄与し、結果として政権支持率の下支えにもつながります。また、他国に対して「日本が先に譲歩した」という既成事実を作ることで、今後の対米交渉において日本が優位な立場を築く可能性もあります。
最大の懸念は、石破政権
しかしながら、このような実行可能なシナリオが描かれているにもかかわらず、懸念材料となるのが石破政権の対応です。石破首相は親中派として知られており、もし中国から「トランプに屈するな」といった牽制を受けていれば、判断を先送りしたり、交渉を曖昧にするリスクが出てきます。
判断の遅れがチャンスを逃す
今回のようにスピードがすべてを左右する交渉において、決断の遅れはそのまま成果の喪失につながります。赤澤大臣の再訪が今月中とされている点からも、早急な対応が強く求められている局面であることは明らかです。ここで決着をつけることができなければ、外交としてのインパクトが弱まり、せっかくのチャンスを失いかねません。
トランプ大統領が赤澤大臣と面会した背景には、こうしたスピード感とインパクトを重視することを伝えたのではないでしょうか。
時間のかかることが予想される米国製の部品や兵器などに関しては、将来的な発注の約束を通じた共同声明の発表も、演出的な外交成果として有効です。EV関連部品の先行発注などを通じて、演出効果と実利の両立が見込まれます。
この関税交渉はチャンスでもある
今回の関税ディールは、外交的にも国内的にも実利と演出を両立できる数少ないチャンスであり、しかも短期的に実行可能な点が特筆されます。たとえば、コメやトウモロコシの大量購入は、アメリカ農家を支援するというトランプ氏のシナリオに合致する一方で、日本国内でも物価安定や減反政策の修正といった実質的な効果をもたらします。
仮にこのシナリオが、日米の政権内部による周到な準備によるものであれば、それはもはや戦略的な舞台設計と呼べるものです。日本側がこのタイミングで英断を下し、明確な行動を取ることで、トランプ政権の”初成果”としての演出を最大化できることを期待したいところです。
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