トランプ関税90日停止の真意:強気の中国を孤立させた“メンツの罠”
アメリカが突如発表したトランプ関税の90日停止。この一手は、金融市場や財政への影響にとどまらず、報復という強硬な姿勢を見せた中国を結果的に追加関税の標的となりました。もう引き返せない“メンツの罠”。世界市場を巻き込んだこの戦略的駆け引きの背景を考察していきます。
なぜ突然、関税が止まったのか?
2025年4月9日、トランプ政権は突如として追加関税の発動を90日間停止すると発表しました。しかし、報復した中国には、追加関税をさらに増やすと発表が続き、市場やメディアに大きな波紋が起こっています。「交渉のための一時停止」という建前の裏に、もっと深い事情があるのではないかと考えられます。この決定の背後にあったのは、経済政策の再調整であり、実際には米国債市場での10年金利の急上昇が大きく影響していたと考えられます。
市場の反応と10年金利の急騰
高関税が発動されると、投資家は「モノの価格が上がる=インフレが進む」と予想し、国債を売り始めました。債券が売られれば、価格は下がり、利回り(金利)は上昇します。特に米国10年債利回りが急騰したことで、市場は混乱しました。金利の上昇は、住宅ローンや企業の借入コストに跳ね返り、株価にも悪影響を与えます。
財政への影響と政策修正の動き
さらに重要なのは、政府自身が支払う国債の利息負担が急増するという点です。1兆ドルを超える財政赤字を抱える中での金利上昇は、財政運営の大きなリスクとなります。トランプ政権はこの「金利ショック」に強い警戒感を持ち、関税の90日停止を打ち出すことで、金融市場に安定感を与えようとしたと考えられます。
中国の報復、そして“引けない構造”
関税発動に対し、中国は即座に報復関税を発表しました。中国国内でもこの対応は広く支持され、インタビューでは「報復は当然」とする声が多く聞かれました。しかしここに、中国特有の“引けない構造”が見え隠れします。
メンツを重視する中国の体質
中国は「メンツ」を非常に重視する文化的背景を持っています。習近平体制では、外交での譲歩は共産党の威信を損なうものとされ、国内の統治リスクに直結します。一度振り上げた拳を下ろすことは難しく、結果として報復から報復へとエスカレートする応酬に自ら入っていくしかない構図が生まれてしまいます。
追加関税と引けない状況の深まり
このような中、トランプ政権はさらに100%を超える追加関税を実施し、中国はますます“後に引けない”状態に追い込まれていきました。中国がメンツを保つためには、トランプ政権の追加関税に追従して報復するしかありません。
各国の動き、そして中国の孤立化
日本は、早々に石破首相がトランプ大統領と電話会談を行い、単なるメッセージの伝達であったものの、トランプ政権の財務長官スコット・ベッセントが「日本が早期に協議を始めることで優位に立つかもしれない」などと発言し、その後「70近い国・地域が関税問題でアメリカとの交渉を求めている」というような報道が続きました。
日本の立ち位置とプロパガンダの可能性
これは、アメリカが交渉の余地を日本に示し、日本が積極的に協議に応じたことで、優位に立てるかもしれないという印象を演出するためのプロパガンダとして利用された可能性もあります。円安もあり衰退を感じる日本でも、世界的に見れば依然として経済大国であり、その行動に追従する国があった可能性も否定できません。もしこれがトランプ政権と石破政権が画策したシナリオだったとすれば、一定の評価はできますが、実際には日本もその戦略に巻き込まれたに過ぎなかったとも考えられます。
国際社会の反応と中国の孤立化
興味深いのは、この米中関税戦争に他の主要国がどのように関与したかという点です。中国は当初、各国もアメリカのやり方に反発し、報復するであろうと期待していたかもしれません。しかし、多くの国は、米国にすり寄り、中国は完全に「1対多」の構図に引きずり出され、国際的に孤立した形となりました。これはトランプ政権にとって戦略的な勝利を狙ったものなのかもしれません。
この経済戦争の勝者は誰か?
この一連の動きは、単なる関税や通商交渉の枠にとどまらず、文化、政治体制、世論形成、そして金融市場の反応といった要素が複雑に絡み合う高度な心理戦だったのかもしれません。トランプ政権は、「まず関税を発動し、その反応を見ながら調整する」という独特のスタイルを貫きました。そして中国の“メンツ”に乗じる形で、「引くに引けない状況」に追い込み、国際的に孤立させることに成功したとも言えます。
枠組みを超えた構図の勝負
この争いの本質は、単なる経済指標や数字の勝負ではありませんでした。むしろ、国際社会の中でどのような構図を形成し、どのように印象を操作するかという、高度な情報戦・心理戦が主戦場だったのです。関税戦争と呼ばれたこの一連の動きは、従来の通商交渉の枠を超え、実際のマーケットを舞台に展開された“実地の経済戦争”と言えるでしょう。
しかも、これは事前の警告や予告を経ずに発動され、その結果を見ながら政策を修正するという動きでした。あたかも試験的に世界経済を揺さぶるような手法であり、誰もその先を読み切れない、予測不能な展開が今後も続く可能性があるのです。
今も続く“トランプ劇場”
そして何より重要なのは、私たちが今もなお「トランプ劇場」に巻き込まれ続けているという事実です。この構図は、今までも何度か取り上げてきた通り、単なる政策ではなく、トランプという存在そのものが発信する“劇場型の政治”であるということを、忘れてはなりません。
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