【入門】仲値とゴトー日 — 実需フローが生む時間帯・日付の偏りと、その読み方
【要点】
・仲値は、銀行が顧客取引に使う基準レート。日本では、午前10時前(9時55分ごろ)の市場レートをもとに決まる
・ゴトー日(五十日)は、5と10のつく日。企業の決済が集まりやすく、ドル買い需要が強まりやすいと言われる
・どちらも「実需フロー」を理由とする、観測された偏りの話であり、毎回成立する保証はない。検証するなら、時刻の補正が前提になる
■ 1. 用語の整理
【画像:fig30_nakane_table.png】
表のとおり、仲値は「時間帯」、ゴトー日は「日付」に関わる話だ。どちらの根拠にも、実需フローがある。ただし、いずれも一般に言われる説明であり、ラボの実測ではない。
■ 2. 仲値とは何か
仲値は、銀行がその日の顧客向け外貨取引に適用する、基準のレートである。両替や外貨預金の際の為替レートは、この仲値に手数料を加減して決まる。日本の主要銀行では、午前10
時前、だいたい9時55分ごろの市場レートを参照して、公示される。
なお、仲値の決め方は銀行ごとに細部が異なる場合があり、本稿は一般的な説明にとどまる。
この決定が、1日に1回、朝に行われる点が重要だ。顧客向けのレートが朝に固定されるため、銀行は、その時点までに、顧客からの注文に見合う外貨を、市場で手当てしておく必要がある。
■ 3. 実需フローという考え方
為替取引には、価格差を狙う投機的な取引と、貿易や投資に伴う実需の取引がある。
実需の取引は、価格を見て売買するのではなく、決済期日などの必要に応じて出される。
そのため、時間帯や日付に、偏りが生じうる。 仮説としては、次のように説明される。輸入企業は、海外への支払いのために、ドルを調達する必要がある。
その手配が、仲値の公示に向けて、午前中に集中しやすい。
日本の貿易構造から、ドル買いの需要が相対的に大きくなりやすく、仲値前にドル円が上がる傾向が出る。
仲値を過ぎると需要が一巡し、反動が出ることがある。 一方、輸出企業には、受け取ったドルを売る需要がある。
実際には、輸入、輸出、機関投資家の資金移動などが混ざり合って、ネットの需給が決まる。
ドル買いが優勢かどうかは、時期によって異なる。
ただし、これは仮説である。
朝の9時台は、東京市場が動き出す時間帯でもあり、取引参加者が増えて値動きが出やすい。
仲値の影響なのか、単に動きやすい時間帯だからなのかは、切り分けが難しい。
■ 4. ゴトー日とは何か
ゴトー日は、五十日と書き、5、10、15、20、25、30日(月末)を指す。
日本の企業の商習慣として、支払いや決済をこの日にまとめる傾向があるとされる。
【画像:fig29_goto_calendar.png】
支払いが集中する日は、ドルの調達需要も集中しやすい。
したがって、ゴトー日は、仲値に向けたドル買いが、通常より強まりやすい、と説明される。
該当日が土日や祝日の場合は、前後の営業日にずれる。図の2026年11月では、15日が日曜日にあたる。
ゴトー日の中でも、5・10日や月末が特に意識されやすいとされるが、どの日が強いかは、定説というより、観測された傾向の話である。
月末は、ゴトー日の決済に加えて、月をまたぐ資金調整など、別の要因も重なりやすい。
「ドルが動く日」が同じでも、その理由は複数ありうる。
■ 5. なぜ「偏りがある」と断定できないのか 理由は、主に2つある。
1つ目は、実需の量や向きが、年によって変わることだ。貿易収支や為替水準が変われば、ドルの需要の大きさも向きも変わりうる。
過去に観測された偏りが、将来も同じ形で現れるとは限らない。
2つ目は、偏りが広く知られることで、その偏りを狙う取引が増え、偏り自体が小さくなる可能性があることだ。
よく知られた話ほど、効果が薄れやすい。
したがって、こうした偏りは、決め打ちで使うものではなく、検証で確かめるものとして扱うのが妥当である。
■ 6. 検証するときの観点
仮に、仲値やゴトー日の偏りをバックテストで確かめるなら、次の点に注意が必要になる。
・時刻の補正:仲値は日本時間の話だが、MT4のサーバー時刻は日本時間と異なり、夏時間と冬時間で1時間ずれる。サーバー時刻に直して、時刻を指定する必要がある
・営業日の扱い:ゴトー日が休日にあたる場合の扱いを、あらかじめ決めておく。前の営業日とするのか、後の営業日とするのかで、結果が変わる
・期間と取引数:ゴトー日は月に数回しかないため、短い期間では取引数が少ない。十分な年数を取って、取引数を確保する
・コスト:朝の時間帯はスプレッドが広がることがある。スプレッドを実際に近い値にして確かめる
また、期間を分けて、偏りが一貫して出ているかを確認することも重要だ。
特定の年だけで成り立っている偏りは、再現性が低い。偏りの有無は、複数の期間で見て、はじめて判断できる。
検証の結果、偏りが見えた場合も、それだけで実運用に移すのは早い。
時刻の補正を入れても残る偏りか、期間をずらしても残る偏りかを、確認する必要がある。
■ 7. まとめ
仲値は「時間帯」、ゴトー日は「日付」に関わる偏りの話で、どちらも実需フローという考え方が土台になっている。
ただし、いずれも観測された偏りであって、将来を保証するものではない。
偏りが見えても、それを使うか避けるかは、設計の目的によって決まる。
我々Semura Lab.は、時間帯や日付の偏りを、決め打ちせず、検証で確かめる対象として扱っている。
ラボのGBPJPY Anomaly v04も、東京仲値の流れやゴトー日の決済需要といった偏りを、検証の結果を見ながら扱っている。
EAの検証や、時間帯の偏りの確かめ方で気になる点があれば、よろず相談所でお気軽にどうぞ。
https://www.gogojungle.co.jp/mypage/community/485