えんむすびAI 開発ストーリー 第3回 ― なぜ損切りをなくしたのか(いちばん危うい選択)
前回は、出遅れた一輪を買い、回帰(仲間に追いつくこと)を待つという発想をお話ししました。今回は、その先にあるいちばん危うい選択について書きます。このEAは、損切りをしません。なぜそんな設計にしたのか。そして、その代わりに何で守るのか。良いところより先に、危ういところから書きます。
この手法の肝は、ズレが縮んで戻るのを待つことです。ところが、待っている間は含み損を抱えます。ここで損切りを入れると、どうなるか。いちばん戻る直前で切ってしまい、本来取れたはずの回復を、自分の手で逃すことが多いのです。
検証を重ねるほど、この傾向ははっきりしました。危機の最中に新規を止めたり、回復のための買い足しを途中で止めたりすると、かえって回復が遠のく。回帰を狙う手法に、ふつうの損切りは噛み合わない。だから私は、損切りを“置かない”ことを選びました。ラクをするためではなく、手法に正直であるためです。
損切りがないということは、含み損に上限がないということです。最大の弱点は「全面円高」。USDJPY・GBPJPY・EURJPYが3つそろって下げると、出遅れた一輪も一緒に沈み、回帰がなかなか来ません。
含み損はふくらみ続け、急速で一方向の円高が想定を超えて続けば、口座が破綻する可能性があります。これは設計上の構造的な弱点で、消すことはできません。「損切りなし=安全」では、絶対にありません。
だからこそ、このEAは必ず余裕資金で。そして、損切りがない代わりの“守り”を、別のところに用意しています。
※イメージ図。回復する場合もあれば、戻らずに含み損が拡大し続ける場合もあります。
損切りをなくした分、守りは「入口」と「資金」に寄せました。
- ①新しい買いを止める・待つ:ボラの急拡大・急落・スプレッド異常・証拠金の低下を察知すると、AIが新規を止めます。傷口を広げない「待ち」の判断です。
- ②資金を厚めに:想定される深い含み損に対して、十分な余裕資金を。0.01ロット×3銘柄あたり160万円が目安です。
- ③買い足しの間隔と本数を管理:やみくもに増やさず、一定の値幅ごと・上限つきで。回復を待つための玉を、計画的に並べます。
守りの主役は「損切り」ではなく「止める判断」と「余裕資金」。攻めの形(回帰狙い)を変えないために、守りの置き場所を変えた、ということです。
参考までに、検証(約11年・実データ)の数字です。これはあくまで現在の開発版の成績で、完成形でも、将来の約束でもありません。
これは開発時点のスナップショットにすぎません。ロジックはこれからも手を入れて、もっと良くしていくつもりです。数字が固定だとは思っていません。良い数字も、痛い数字(含み損)も、いまの段階のものとして、そのまま並べておきます。
含み損を抱える時期を、このEAでは「花冷え」と呼んでいます。寒さに耐えて待てば、また開花する。連載タイトル「散っても、また咲く」は、この回帰への信頼から来ています。
でも、桜は枯れることもあります。無理な資金で回せば、開花を待つ前に枝が折れる。だから「また咲く」を信じる手法だからこそ、枯らさない資金管理が、何よりの命綱になります。
損切りをなくしたのは、回帰という手法に正直であるため。その代わり、リスクは先に全部お見せします。全面円高に弱く、最悪は破綻もありうる。だから余裕資金で、止める判断と資金で守る。——これが、いちばん危うい選択の正体です。
次回は、その「止める判断」を担うAIの話。何をAIに任せて、何を任せないのか。権限の線引きについて書きます。
※本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を目的としたものではありません。掲載している運用結果は過去の実績であり、将来の利益を保証するものではありません。FX・CFD取引はリスクを伴います。投資判断はご自身の責任において行ってください。