売らない、という選択 ― なぜ私は「買い特化」の自動売買を作るのか
売らない、という選択
「売りはやらないんですか?」。私のゴールドEAは買い専用のものが多く、よくこの質問をいただきます。下げ相場で指をくわえて見ているのはもったいない、という気持ちはよく分かります。きょうは、それでも私が「買い特化」を選ぶ理由を、設計者の本音として書きます。
ゴールドには「上に向かう癖」がある
まず大前提として、ゴールドは長い目で見ると上昇する傾向を持っています。通貨の価値が時間とともに薄まること、世界の中央銀行が金を買い続けていること、そして不安なときに資金が逃げ込む先になること。理由はいくつもありますが、結果として価格は数年単位で切り上がってきました。
この前提に立つと、買いは「大きな流れに乗る取引」、売りは「その流れに逆らう取引」になります。逆らう側で勝ち続けるのは、流れに乗る側よりずっと難しい。私はまず、ここを出発点に置いています。
売りは「天井を当てる」ゲームになりやすい
上昇基調のなかで売って利益を出すには、どこかで「ここが天井だ」と当てる必要があります。けれど相場の方向、とくに天井と大底は、誰にも正確には当てられません。私自身、過去にそれを何度も試して、何度も外しました。
買い特化は、その「当てにいく」発想を最初から捨てる戦略です。天井を予想しない。下がってきたところを淡々と拾い、流れが戻るのを待つ。予想を当てる勝負ではなく、確率の高いほうに身を置き続ける勝負に変える。これが買いに絞る一番の狙いです。
下げは速く短く、上げは緩く長い
もうひとつ、値動きの「形」も理由になっています。ゴールドの下落は、急で鋭いかわりに短く終わることが多い。逆に上昇は、ゆっくりですが長く続きやすい。この非対称性が、買いと売りで時間の意味を変えます。
買いで持っているときは、急な下げを食らっても「待てば戻りやすい」ため、時間が味方になります。逆に売りで持つと、わずかな含み益が上昇であっという間に消えてしまう。時間が敵に回ります。同じゴールドでも、買いと売りでは戦いやすさがまるで違うのです。
弱点も隠さず書きます
ただし、買い特化は万能ではありません。最大の弱点は、一方向に長く続く下落にめっぽう弱いこと。流れに乗る前提が崩れた瞬間に、買い玉は重荷に変わります。
実際、私が出していたアノマリー系のゴールドEAは、長く続いた下落に耐えられず破綻しました。買いを止める仕組みが甘く、流れが反転しても拾い続けてしまったためです。買い特化=安全、では決してありません。
だから私は、「買う流れに乗る」ことと同じ重さで、「どこで止めるか」を設計します。資金とロットのバランス、深追いをしない損切りや撤退のルール。攻めの方向を絞るぶん、守りは厳しく。これがセットでなければ、買い特化は成立しません。
それでも買い特化を選ぶ理由
弱点を踏まえてもなお、私が買いに絞るのは、その「シンプルさ」に価値があるからです。やることが一方向に決まっていれば、検証もしやすく、壊れる場所も特定しやすい。勝率が高く出やすいので、運用中の精神的な負担も軽くなります。
売りも買いも欲張って両方に手を伸ばすほど、ロジックは複雑になり、相場のどこで崩れるのか見えにくくなります。複雑な両建てで器用に立ち回るより、流れに沿った一方向にリスク管理を足すほうが、結局は長く付き合える。これが、たくさん失敗してたどり着いた私の結論です。
「売らない勇気」
下げ相場を前に、何もしないのは勇気がいります。それでも、流れに逆らわない、天井を当てにいかない。やらないことを決めるのも、立派な戦略です。
もちろん、買い特化が唯一の正解ではありません。売りで勝つ人もいます。ただ私は、自分が続けられる形として「買い特化+厳しい守り」を選んだ。その理由が、少しでも設計の参考になればうれしいです。
※本記事は情報提供を目的としており、投資の勧誘を目的としたものではありません。掲載している運用結果は過去の実績であり、将来の利益を保証するものではありません。FX・CFD取引はリスクを伴います。投資判断はご自身の責任において行ってください。